我孫子ゆかりの文化人と山下清と我孫子駅開設の功労者飯泉喜雄と

我孫子市ゆかりの文化人写真パネル

写真パネル『我孫子ゆかりの文化人』

我孫子市ゆかりの文化人写真パネル

JR我孫子駅南口に『我孫子ゆかりの文化人』というパネルがある。

真ん中には大きな集合写真。武者小路実篤邸の庭で大正6年に撮られたものだ。後列左3人目から武者小路実篤、柳宗悦、志賀直哉の白樺派3人、そしてその家族などが写っている。

下には白樺派3人についての解説が書かれている。

集合写真の両脇には柳田國男、岡田武松、中野治房、嘉納治五郎、杉村楚人冠、バーナードリーチの写真と解説が書かれている。

明治29年(1896)、日本鉄道土浦線開通により手賀沼を望む丘の上は別荘地として注目されるようになり、著名な文化人が居を構えたり湖畔に別荘を持つことになる。

今でもこの文化人たちのゆかりの場所がいくつも手賀沼周辺には存在している。それについては今までもいくつかここで記事にしているので、良かったら読んでみて下さい。

ちなみに『日本鉄道』は日本初の私鉄で、1906年(明治39年)公布の鉄道国有法により国営化されている。

弁当屋『弥生軒』で働いていた山下清

我孫子駅弥生軒唐揚げそば

我孫子ゆかりの文化人という意味では、我孫子駅構内の立ち食い蕎麦『弥生軒』絡みで『山下清』を忘れてはならないだろう。

昭和17年から5年間、住み込みで働いていた。もちろん立ち食い蕎麦をつくっていたわけではない。

今でこそ『唐揚げそば』で有名な『弥生軒』だが、元々弥生軒は昭和3年に創業。

我孫子駅構内でお弁当を売っていて、そのお弁当のレッテルを貼ったり紐でしばったりといった手先の細かい作業をしていたそうだ。

突然ふらりといなくなり半年後にはまた帰ってくる生活を5年間繰り返し、最後の夜逃げでとうとう帰ってこなかったらしい。

山下清展チラシ・チケット

その後、有名になった山下清氏に弁当の掛け紙の絵を描いてもらっていて、少し前に開かれていた『山下清展』にその実物が展示されていた。

我孫子駅弥生軒山下清パネル

今では駅構内の店先に山下清氏との関係が書かれた看板がある。

蒸気機関車6600系の『飯泉喜雄顕彰碑』

飯泉喜雄顕彰碑

先ほどの写真パネルの傍には、機関車の形をした顕彰碑がある。建立されたのは平成15年(2003)。

機関車の前面煙室扉には『6600』とあるので6600系の機関車であることがわかる。ただ6600系は明治30年にアメリカから輸入されたものだから開設当時はまだ走ってはいなかったのではないかな。

扉の円の縁には『飯泉喜雄顕彰碑 我孫子駅開設の功労者』とある。

飯泉喜雄顕彰碑

碑文は以下。

飯泉喜雄氏は「鉄道なくして町の発展無し」と信じ駅誘致に奔走私財を投じて駅用地を無償提供し明治二十九年我孫子駅開設に成功した

さらに我孫子町長千葉県議会議員をつとめ地域の発展に尽力した

以来この町は成田線の開通生糸工場進出白樺派文人の来往など発展の道をたどる 氏は激務と心労のため三十八歳で病没した

私たちは氏の先見の明と奉仕の精神に満腔の謝意を捧げ今こそ町を愛する精神を奮い起こそう

平成十五年 五月 
飯泉喜雄顕彰碑建設の会
協力者 壱千三百余名

自分の持っていた土地を町はずれの土地と交換、停車場用地を確保し無償提供して鉄道誘致を図ったのだから素晴らしい。

その後は二度町長にもなったが早くに亡くなってしまう。

亡くなると残された家族も全然知らない借金の返済を迫る人達が、他人は勿論、近親者からも出てきて、結局飯泉家の財産は全て無くなってしまったようだ。

そして妻も3人の子供たちも全て亡くなり、直接喜雄氏の血を引いている者は1人も居なくなってしまったということだ。何とも残酷というか残念な話だ。

というわけで…

よく『この人がもしも居なかったら…』ということってあるけど、この飯泉喜雄氏が居なかったら我孫子駅はなかった。

なければ白樺派の別荘地にもならなかったし山下清も働いていなかったはずだ。

逆に考えると、今のようなベッドタウンになって手賀沼が日本一汚い沼になることもなかったかもしれないとも言えるし、遅かれ早かれ結局は場所的にはそうならざるを得なかったかもしれない。

発展したことが良かったのかどうなのか?それは時代にもよるし、考え方にもよる。

選択肢があって、どっちが良かったのか?って考えると、どっちとはなかなか言えないことの方が多いけれど、これもまたどっちとはなかなか言えない。

ただ我孫子の大功労者であることには何も変わりはない。

この小さな顕彰碑の存在は知っていても、どんなものなのか?を知らない方も大勢いるだろう。

もしもこれを見たら、我孫子駅開設に私財を投げ打った若者が居たんだということは思い出していただけたらなと思う。

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