手賀大橋アンダーパスの『静寂』

手賀大橋アンダーパスの壁画

見慣れた景色が変わるのを見るのは、
案外楽しいものだ。

もちろんいつも楽しい変化ばかりとはいかないが、
ごく短い間に(×)から(〇)への変化を体験したことがある。

悪い変化

手賀大橋アンダーパス

それは長さ25メートル、
高さ3メートルほどのトンネルの中だ。

いつも自転車散歩で通る手賀沼沿いの遊歩道、
そこに架かる手賀大橋の我孫子側のアンダーパスの壁。

そこにはこういう場所にありがちな、
見るに耐えない落書きがあった。

それはセンスも美しさも主張も知識も優しさも、
何もないようなものだった。

そこを通る多くの人々はそれを見て嫌な気分になったかもしれないし、
悲しくなったかもしれないし馬鹿にしたかもしれないし…。

いずれにしても、
ポジティブな印象は持てなかったに違いない。

もちろん、
中にはそうではない人だっていたかもしれない。

何しろ、
人によってものさしの目盛りは違うものだから。

良い変化

手賀大橋アンダーパス壁画

それからしばらくすると、
その場所に誰かが壁画を描くという話を耳にした。

『我孫子動物彫刻展 島田忠幸 プリニウスの動物たち』を企画したアートで地域おこしを進める市民サークル、
『我孫子手づくり散歩市』が依頼したものらしい。

それを聞いて最初に思ったことは、
もちろん壁画は良いけれどまたその上に落書きとかされたら最悪だよなということだった。

それに対して何か対策とかを講じるのだろうか?
壁画が描かれたらそこに落書きなんてするはずがないというお気楽さなんだろうか?

だからといって、
ボクに何かできるわけではない。

何もできないというよりは、
何もしないくせにあれこれ考えても仕方ない。

※その後この場所には監視カメラが設置されていた。

t賀大橋アンダーパス壁画

出来上がった頃にその場所に行ってみると、
白地に金の円が描かれているのが見えてきた。

手賀大橋アンダーパス壁画

それだけでも何だか良さそうだぞと感じたが、
実際に見ながら通り抜けて振り返るとまさに長さ25メートル/高さ3メートルほどの両側の壁いっぱいに金と黒と白メインのステキな絵が描かれていた。

手賀大橋アンダーパス壁画

中心は、
我孫子市の鳥オオバン(大鷭)だ。

オオバン

確か『鷭』という鳥が居るけれど、
それよりも大きいことから『大鷭』というらしい。

千葉県では、
危急種(絶滅危惧II類・VU)に指定されている鳥だ。

手賀大橋アンダーパス壁画

この作品は、
コンペで選ばれた長野市の画家・絵師OZ – 尾頭 – 山口 佳祐氏の作品でタイトルは『静寂』。

手賀大橋アンダーパス壁画

片方には、
オオバンが飛んでいる姿。

手賀大橋アンダーパス壁画

もう片方には、
かつて手賀沼に生育していた水草ガシャモクを載せた船と船頭。

手賀大橋アンダーパス壁画

更にオオバンが群れをなして行進しているかのような姿が、
アクリル絵の具で描かれている。

作者の言葉

古くから文人や文化人に好まれた我孫子には、創造の根源ともいえる「静寂」が日常空間の近い場所に存在しているように感じている.
市の鳥オオバンと曲線を軸に「静寂」を表現.
我孫子市が未来へ羽ばたく姿、かつての白樺派、そして、手賀沼周囲の景観の記憶と良化への願いを壁面に込めた.

落書きで嫌な気分になっていた空間が、
この絵のお陰で全く別のものに変わっていた。

そこに描かれたもので、
ここまで空間の印象が変わるものなんだなと改めて驚いた。

まさかとは思うが、
このまま落書きなどされることなく保たれれば良いなと感じた。

場所

OZ - 尾頭 - 山口佳祐 - 静寂 - Google マイマップ
OZ - 尾頭 - 山口佳祐の壁画

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